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サンタ・マリア・ラ・レアル聖堂 2 「表情とかたち」

                                 2019年6月30日


 
 サングエサの撮影は、やって来た29日ではなく30日の朝から昼過ぎまで行った。かなりの数のシャッターを切ったのだが、どうしても過去の4つの記事の画像と重複してしまう。
 サンタ・マリア・ラ・レアル聖堂には100以上の彫刻が800年かそれ以上のときを経て、散りばめられている。ヨーロッパ人には、それに似たことは自分の町でもと言える人が多いのかもしれないが、日本人の私には、例えば70年以上を経た構造物・建物・道具類を自分の生活環境の視野の中に見つけることは難しい。古いものがよく新しいものはよくないとは思わないが、新しいものは多分に規格に準じた工業製品である。それがどこか気持ちを落ち着かせない。
 日頃から、春は山菜、秋は木の実を求めて、里山に分け入る傾向があるし、夏は今でも磯で潜る。 体力と周囲の事情が許すかぎり、スペインにロマネスクを訪ねようとする志向と、どこか通じている気がする。
 ところで、今年のサンタ・マリア・ラ・レアル聖堂の撮影記録については、過去の画像との重複とか、そんなことはどうでもいいことにして、気に入ったショットを並べることにした。
 工匠レオデガリウス系のものが多くなったが、「ペーニャの名匠」はサングエサでは脇役である。制作する彫刻と取り付け位置をあらかじめ指示されて、仕事をした可能性が高い。彼の本領を発揮した彫刻は、サン・ファン・デ・ラ・ペーニャ修道院回廊、ウエスカのサン・ペドロ・エル・ビエホ聖堂回廊のそれにあるといえよう。(関心のある方は、ブログ内検索が可能です)



                    持ち送り彫刻 ①   

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                    持ち送り彫刻 ②   

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                    持ち送り彫刻 ③   

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                    持ち送り彫刻 ④  

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                    持ち送り彫刻 ⑤   

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                 アーキヴォルト彫刻 ①   

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                    タンパン彫刻 ①   

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                アーキヴォルト彫刻 ②   

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                 アーキヴォルト彫刻 ③  

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                 アーキヴォルト彫刻 ④   

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                  アーキヴォルト彫刻 ⑤  

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                  アーキヴォルト彫刻 ⑥  

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                  アーキヴォルト彫刻 ⑦    

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                  アーキヴォルト彫刻 ⑧   

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                  アーキヴォルト彫刻 ⑨   

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                壁面の小さな支柱の柱頭彫刻 ①   

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                 壁面の小さな支柱の柱頭彫刻 ②   

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                ファザード上部のギャラリー彫刻 ①   

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                ファザード上部のギャラリー彫刻 ②  

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                ファザード上部のギャラリー彫刻 ③   

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サングエサ: サンタ・マリア・ラ・レアル聖堂 1

                                 2019年6月30日

 
 ソスから来てサングエサに泊ったのだが、この町のロマネスクは、スペインのロマネスク・ガイド本には必ず登場すると言っていいサンタ・マリア・ラ・レアル聖堂。 正面になる南の扉口だけでなく、南ファザード全面に彫刻がある。  
 今回の旅でアップしたエステージャやハカのロマネスク画像には、過去のそれとの重複がいささかあった。サングエサも2回は来ているので、重複を避けるためと数多い彫刻をできるだけ撮るために有名なサンタ・マリア聖堂・タンパン彫刻「最後の審判」の撮影はあえてしなかった。
 それでも過去のサングエサ・ロマネスクの記事をブログ内検索してみると何と4つの記事をアップしている。そのすべてがサンタ・マリア・ラ・レアル聖堂に関する画像なのだから、残念ながら今回撮影した画像の大部分は重複している。   
 光と被写体に対する角度がいささか違い、撮影レンズが違うという程度だろうか。それでも、過去の4つの記事にある画像とほぼ同じものは、できるだけアップしないことにしたので、ここの彫刻のほとんどを知ってもらうためには、ブログ内検索で『サンタ・マリア・ラ・レアル聖堂』と入力し閲覧していただきたい。
 なお、中心部にあるタンパン彫刻の画像は、過去の記事『サンタ・マリア・ラ・レアル聖堂:ファザード彫刻①』の中にある。
 タンパン彫刻・側柱彫刻(人物円柱)・アーキヴォルト彫刻・扉口両側の壁面彫刻は、レオデガリウスというフランスで修業を積んだらしい工匠(工房)が製作したみられている。直接記名があるのは側柱彫刻だが、ファザード下部は作風が類似している。
 ファザード上部の2段のギャラリー彫刻は、サン・ファン・デ・ラ・ペ-ニャ修道院回廊とウエスカのサン・ぺドロ・エル・ビエホ聖堂回廊に類似の彫刻群を残す「ペーニャの名匠」の作である。 



      左側柱の3人のマリア (左からマグダラのマリア・聖母マリア・ヤコブとヨセフの母マリア)   

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                  マグダラのマリアの半身像   

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                     聖母マリアの半身像   

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                  マグダラのマリアの名前   

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          聖母マリアの名と「レオデガリウス、これを造る」の記載。   

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                   ヤコブのマリアの名前   

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         右側柱の3人の人物 (左から聖ペドロ・聖パウロ・首吊りのユダ)   

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     聖ペドロの半身像 朝来たときは、影になっていたので、昼ごろ再び来て撮影。 

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                   聖パウロの半身像   

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                  扉口右側のコーベル彫刻   

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                  扉口タンパン左側の壁面彫刻 (全図)    

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 扉口タンパン左側の壁面彫刻 ① この怪獣にも、それなりの出自・由来があるはずだが、私には不明。 

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扉口タンパン左側の壁面彫刻 ② 怪獣の右壁面に、右手を小動物に噛まれ、左手を蛇に噛まれ、身体を大蛇に咥えられている女がいる。これは過去の記事にアップした「動物に乳を飲ませる女」と同系統の図像である。 

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                扉口タンパン左側の壁面彫刻 ③   

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                扉口タンパン右側の壁面彫刻 ①   

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                扉口タンパン右側の壁面彫刻 ②   

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扉口タンパン右側の壁面彫刻 ③  左側に剣で怪獣を刺している人物がいる。これは北欧神話でいう「龍を倒すシグルス」、同根のゲルマン神話では「龍を倒すジークフリート」。その下には彼の育ての親、鍛冶屋のレギンが刻まれているのだが、それは過去の記事「ファザード彫刻 ②」で。 

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                扉口タンパン右側の壁面彫刻 ④    

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 扉口タンパン右側の壁面彫刻 ⑤  羽根を持つ怪獣の前に、同じく羽根を持つ尻尾のあるものが見える、これは現在のタイトル画像の怪獣である。 

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昼過ぎまでサングエサに居て、レストランで昼食を摂った。15ユーロ前後が高級でない店の平均料金。一皿目・サラダ、スープ、その他前菜、二皿目・肉、魚、その他。ここはいい店らしく、店内は客であふれ、私はテラス席で。   

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 東洋人は、この町ではまだめずらしいのか、シェフが出てきてワインを奨めてくれた、料理はワイン付。 このレベルのレストランでも、ワインの良し悪しは店の評判を左右する。シェフは、どちらも自信ありげだったが、私は昨年オリテのバルで飲んでおいしかった、ナバーラのロゼを選んだ。リオハは有名だが、近年は味が平均化し個性に欠ける。(もちろん低価格帯のワインの話だが) 

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サンタ・マリア・ラ・レアル聖堂:アーキヴォルト彫刻・柱頭彫刻

                                 2015年6月12日

 
 写真集「スペインのロマネスク教会」の櫻井義夫解説は、サングエサのサンタ・マリア聖堂の見どころは3つに分け、それを”片側3体づつある側柱の人物彫刻” ”タンパン彫刻” ”アーキヴォルト(ヴシュール)の上のギャラリーに並ぶ人物像(十二使徒像)” としている。
 ただ、ファザード彫刻には、それぞれの部分に特色と個性があり、甲乙つけ難いので、あえて挙げればということなのだろう。
そして、この聖堂ならではの特色ある彫刻という意味では、私はアーキヴォルト彫刻をあげたい。
 アーキヴォルト(ヴシュール)は、扉口上部を半円形または尖頭アーチで幾重にも囲む扉口の縁取り。アーキヴォルトを設けるのは、何よりアーチ構造によって、扉口上部の石材の落下を防ぐという構造上の役割がまずあるわけだが、縁取りによって内側のタンパン彫刻、基部の柱頭彫刻を目立たせる意味もある。アーキヴォルトは幅も狭いので、ここには彫刻はないか、あっても文様彫刻かパターン化された小彫刻である場合が多い。
 ところが、ここサングエサのアーキヴォルトは、小彫刻ながら多彩な表情を持ち、タンパンや柱頭彫刻の引き立て役ではない。
 池田本でも、「タンパンを縁取る幾重ものヴシュール(アーキヴォルト)には、聖人、預言者、騎士、罪人、動物などを刻む細かい浮彫がある。彫刻家はここにアキテーヌからナバラに入った賑々しい装飾を採用している。」と指摘している。なお、彫刻家とは、おそらくレオデガリウス、アキテーヌはナバーラに隣接するフランスの地方名。
 ここのアーキヴォルト彫刻で、ひときわ目立つものが。裸の女性が、下からしがみつく四足の小動物に左の乳房を噛ませ、右手には太いひも状のものを握り、ひも状の先端は右乳房に達しているという、エロチックで奇怪な彫像である。
 深澤勝良著「銀河の道」に次のような記述がある。 
「異様な彫刻が一つあります。”まるまると太った2匹の蛇に乳房をかまれている女”で、エンフタスと呼ばれる飾り迫縁の外側の壁に彫られています。
 すわ、めずらしい邪淫のストーリーか?と思いきや、正しくは”蛇に乳を飲ませている女”です。多神教の神の一つである蛇にエネルギーを与える大地の女神にほかなりません。(以下略)」
 私が見たものを解説していると思われる。しかし図像は「太った2匹の蛇」(?)には見えない。右乳房に迫っているのは蛇だと思うが。、



アーキヴォルト彫刻 ①  中央が「動物に乳を飲ませる女」、右のひもを縒ったような身体をもつ動物の彫刻も面白いが、これはアーキヴォルトの外側で、分類的には前の記事のグループになる。 

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アーキヴォルト彫刻 ②「動物に乳を飲ませる女」正面図。右胸には蛇のような長ひょろいものが、左胸には四足の小動物が。 

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アーキヴォルト彫刻 ③ 「動物に乳を飲ませる女」内側の彫刻。いずれも表情に個性があり、レオデガリウスの作であることがわかる。

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  アーキヴォルト彫刻 ④  小彫刻ながら秀作。今、タイトルの背景画にしている。 
 
         
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                 アーキヴォルト彫刻 ⑤ 鍛冶屋(?) 

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                アーキヴォルト彫刻 ⑥   

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                アーキヴォルト彫刻 ⑦   

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                アーキヴォルト彫刻 ⑧   

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         アーキヴォルト彫刻 ⑨ アーチの頭頂部(迫石)の彫刻 

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 アーキヴォルト彫刻 ⑩ 山羊が杖を持った人にみえる騙し絵風の彫刻。下の方には例の女性の胸乳に迫る動物も。 

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                 アーキヴォルト彫刻 ⑪  



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                 アーキヴォルト彫刻 ⑫  

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                アーキヴォルト彫刻 ⑬   

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 アーキヴォルト彫刻 ⑭ ロマネスク彫刻がもつ楽器たちをまじめに撮影してまわろうかと思う。 

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                柱頭彫刻 ①  扉口柱頭 1 

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                柱頭彫刻 ②  扉口柱頭 2 

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     柱頭彫刻 ③  扉口以外の壁面や小窓にあったものを3つ。 
 
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柱頭彫刻 ④スペインではなかなか見られない可憐さがある。レオデガリウスはやはりフランス人(?) 

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                柱頭彫刻 ⑤  

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サンタ・マリア・ラ・レアル聖堂:ファザード彫刻 ②

                                  2015年6月12日


 
 サングエサのサンタ・マリア・ラ・レアル聖堂の記事を書くにあたって参照したのは、池田健二著[スペイン・ロマネスクへの旅」と櫻井・堀内著「スペインのロマネスク教会」である。そのことは、前の記事の中でもふれた。
 ただ、優れた彫刻の多いサンタ・マリア聖堂の記事は、何回かに分けてアップする予定なので、他に参照すべき本はなかったか、身のまわりの本を漁ったところ、深澤勝良著「銀河の道 みちくさ巡礼」を見つけた。結局、この本が一番詳しい。 この方の記述は、ちょっと感激調なので、私は苦手にしていたのだが、背に腹は代えられない。丁寧に再読した。
 サンタ・マリア・ラ・レアル聖堂についての一部を引用すると、「何といってもすごいのが、この南門。教会正面壁を埋め尽くす素晴らしい出来栄えのロマネスクの大彫刻群が見もので、その数300余を越えます。おそらく、これほどのスケールでオリジナルが残っているのはここだけでしょう。彫り込まれているのが聖書に出てくる有名なシーンの一大スぺクタクル。まさに圧巻。まさに至宝。」
 ここまで褒めちぎられると、近くのハカ大聖堂やエウナテ聖堂は、それほどのことはないとでも(?)、と問いかけたくなるのだが。(それはさておき)
 ファザード壁面の彫刻を300余の数にしているのが、今回、紹介する浮彫りの彫刻群。位置は、扉口上の左右の壁が中心。扉口のさらに上の壁面には、2段に組まれた「ペーニャの名匠」の手になる十二使徒像があるので、それとの間ということになる。
 この部分の彫刻は、必ずしも聖書由来だけではない。
 「スペイン・ロマネスクへの旅」(107ページ)には、「なかでも目を引くのは北欧伝説にある鍛冶屋レギンと勇者シグルスの物語を表現した浮彫りである。この南欧の地になぜ北欧の、それも異教の伝説が紛れ込んだのか。その答えは見つからない。
 さらに注目すべきは、剣を打つレギンがレオデガリウス、龍を倒すシグルスが『ペーニャの名匠』の手になることである。二人の彫刻家はここで一緒に制作していたのである。」と述べている。二つの浮彫りの作者をレオデガリウスと『ペーニャの名匠』と特定した理由は挙げていないが、興味深い記述。
  なお、深澤勝良著「銀河の道 みちくさ巡礼」を読んでいて、遅ればせながら引用した方がいいのでは、という部分を見つけた。それは前の記事でアップした、聖堂扉口でタンパンを支えている右コーベル(持ち送り)彫刻のことである。大きく恐ろしげな怪獣が3人の人間を飲み込もうとしている図だが、この怪獣は、地獄に罪人を送り出す役目を担う想像上の動物「アンドロファゴ」なのだそうである。
 アンドロファゴまたはアンドロファゴイ人で、ウィキぺディアをあたってみたが、よく出ていなかった。世の中には詳しい人がいるものである。



                壁の浮彫り ①   

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 壁の浮彫り ②  ここも広い意味では壁の一部なのだが、南扉口の壁の両側には、壁を補強する意味で扶壁(バットレス)が屋根まで伸びている。そのバットレスにも、あちこちに浮彫りがある。 

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     壁の浮彫り ③ これが北欧伝説の鍛冶屋レギンなのだろう。 

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壁の浮彫り ④右のバットレス上の浮彫りの方が目立つが,左の剣で龍へ切りつけているのが勇者シグルスか

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   壁の浮彫り ⑤ 彫刻たちはすべてオリジナルのせいか、どこかが欠落しているものが多い。 

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 壁の浮彫り ⑥  これも想像上の動物。ともかく飛べそうでなくとも、羽根を持つ者が多い。 

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 壁の浮彫り ⑦  上にはギャラリー彫刻のためのラインがあり、左下には扉口上部のアーチの曲線が少し見えている。 

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        壁の浮彫り ⑧  浮彫りの大きさは大小様々。 

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  壁の浮彫り ⑨ 怪獣がつかんでいるのは人、それも男の。半分食べてしまった。(?) 

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       壁の浮彫り ⑩  バットレス部分には、こんな彫り込みも。 

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 壁の浮彫り ⑪  右・バットレス部分のニッチ、中央・壁面の文様彫刻、左・アーキヴォルト部分 

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       壁の浮彫り ⑫ 扉口側柱の人物彫刻(ユダ)の右にも動物彫刻が。 

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        壁の浮彫り ⑬ 龍なのだろう。のんびりしてユーモラス。 

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       壁の浮彫り ⑭  脚を広げた女人が教会の壁に出現するとは。 

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  壁の浮彫り ⑮  組みひも文様とでもいうのだろうか。この帯状のひもを組んだものが幾つか。 

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     壁の浮彫り ⑯  これも調べれば、何かの伝説に由来する人物像なのだろう。 

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         壁の浮彫り ⑰  残念ながら、顔が欠けていた。 

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                壁の浮彫り ⑱   

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                壁の浮彫り ⑲   

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サンタ・マリア・ラ・レアル聖堂:ファザード彫刻 ①

                                 2015年6月12日


 
 サングエサのサンタ・マリア・ラ・レアル聖堂はスペイン・ロマネスクを代表する建築・彫刻の一つとして、いろんな本によく出てくる。
しかし、私的には魅力的な聖堂とは思えなかった。まず、その立ち姿はまるでゴシックだ。尖頭をもつ鐘楼はゴッシク期に出来たのだから、そうなるわけではあるが。建築は天空を目指していて、落ち着きのあるロマネスクのたたずまいではない。
 彫刻は、正面になる南扉口とその壁面に集中している。その数は多く、扉口とその上部の壁面が彫刻で覆い尽くされているといっても過言ではない。彫刻過多なのである。
 私が好む聖堂の一つに、サンティジャーナ・デル・マルのサンタ・フリアナ聖堂があるが、サンタ・フリアナの正面ファザードは彫刻の数は少なくすっきりした感じで、その立ち姿には建築としての構成美が感じられる。
 そんなわけで、自分の中ではそれほど点数の高くなかったサングエサだったのだが、今回来てみて、彫刻の質の高さでは、やはりスペイン屈指。ここへは初めて望遠レンズ持参だったのだが、300ミリズームで彫刻を覗くということは、単眼鏡または双眼鏡で見るようなものである。よく観察すると、彫刻は秀作・佳作揃い、人物の表情には生気がある。「スペイン・ロマネスクへの旅」の著者が「名匠たちの競演」と述べているのも理解できる。主な彫刻家は二人、上の部分が「ペーニャの名匠」、下の大部分がレオデガリウス。レオデガリウスの名は、左側柱の「3人のマリア」像の聖母マリアがもつ書物に刻まれている。
「ロマネスクへの旅」によれば、彼は推定ブルゴーニュ出身。人物の衣の表現や図像の選択がブルゴーニュ的なのだそうだ。
 持ち帰った画像を点検してみると、「3人のマリア」像を撮影していない。左側柱には太陽光線があたらず、撮影条件がよくなかったためだろう。ただし、3人のマリアがもつ「文字の書かれたもの」は、しっかり撮影している。
 また、ファザードの壁面全体を撮影していない。これは、近年、壁面上部に彫刻保護のため、無粋な金属のひさしが設置されたのを、撮影したくなかったから。(やむを得ない措置なのかもしれないが)
 壁面全体図は、池田健二著「スペイン・ロマネスクへの旅」、櫻井・堀内著「スペインのロマネスク教会」などで参照してほしい。



           サングエサ : サンタ・マリア・ラ・レアル聖堂   

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   サンタ・マリア・ラ・レアル聖堂ファザード扉口・タンパン彫刻   画像 B 

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ファザード扉口・右側柱彫刻  聖ペトロ、聖パウロ、ユダ。ユダは首吊りの姿で小さく表現されている。(「スペイン・ロマネスクへの旅」)
 


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          ファザード扉口・右側柱彫刻  聖ペトロと聖パウロ

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                聖ペトロと聖パウロの手と衣の表現   

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    ファザード扉口・左側柱彫刻  3人のマリアがもつ「文字の書かれたもの」 ①

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ファザード扉口・左側柱彫刻  聖母マリアの指差しているのが「レオデガリウス」の文字らしい。             

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    ファザード扉口・左側柱彫刻  3人のマリアがもつ「文字の書かれたもの」 ③

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    扉口のタンパンを支えるコーベル(持ち送り)・右  左のものは剥落が多い。 

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   タンパンは3段に分かれるが、上2段の中央を占める「荘厳のキリスト」  画像B 参照 

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         「荘厳のキリスト」を取り巻く四天使  画像B 参照 
           
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          「荘厳のキリスト」を取り巻く四天使  画像B 参照             

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タンパン・上段右・彫像  半円に沿って周辺部が小さくなる「枠組みの法則」の事例  画像B 参照                       

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 タンパン・上段左・彫像  半円に沿って周辺部が小さくなる「枠組みの法則」の事例 画像B 参照                        
              
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タンパン・上段右・彫像 中央部は地獄行きの罪人(の魂)らしい。 画像B 参照                 

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           タンパン・中段左・彫像(義人)  画像B 参照                 

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             タンパン・中段右・彫像(義人)  画像B 参照                 

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  タンパン最下段(3段目)の十二使徒 ①  使徒の名は彩色されていたようだ。 画像B 参照                 

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           タンパン最下段(3段目)の十二使徒 ②

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      タンパン最下段(3段目)の十二使徒と聖母マリア ③         

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          タンパン最下段(3段目)の十二使徒 ④         

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        タンパン最下段(3段目)の十二使徒 ⑤  重複あり 

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       タンパン最下段(3段目)の十二使徒 ⑥      

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プロフィール

翁岳(おきなだけ)

Author:翁岳(おきなだけ)
若い頃、1969年から数年間屋久島の山に登っていた。現在は年金生活者。高校の社会科教師だった関係もあり、ヨーロッパ中世史・ロマネスク美術・サンティアゴ巡礼史に関心を持ち、定年後巡礼路を歩く。 趣味:ストレッチング、陶芸、写真、素潜り。

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